業界横断 副業・兼業者の実態調査
本調査の背景
近年、政府主導の働き方改革により副業・兼業の促進が急速に進んでいます。2024年の「新しい資本主義」実行計画では労働時間通算ルールの見直しが示され、制度は転換期を迎えました。しかし「どの業界で、どのようなトラブルが、どの程度起きているのか」を示す客観データは限られており、企業人事・行政担当者・働き手はリスク評価や制度運用になお課題を抱えています。
本調査は全国の20〜65歳8万9,168名(副業実施者7,569名)を対象に、14業界97業種を横断した調査を行いました。本調査では副業の実施率・収入・時間に加え、制度理解、職場寛容度、トラブル発生率を整理し、業界別リスクを可視化しています。
さらに副業率とトラブル発生率を掛け合わせた「副業リスク総量」を算出したところ、農林水産・不動産・製造が高リスク、教育・医療・福祉が低リスクに分かれる三層構造が浮かび上がりました。また、競業や情報流出の懸念が高い業界ほど「服務規定は守っている」と認識しながら機密情報の流用が確認されるなど、規範意識と実践の乖離も見受けられました。
本報告書は、副業を安全かつ持続的に活用するための論点を整理し、個人・企業・政策立案者がより適切な判断を行う際の基礎資料となることを目指しています。
引用について:本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:株式会社フクスケ「業界横断 副業・兼業者の実態調査」
サマリ
業界は副業率×トラブル発生率=トラブル総量でリスク度合いを3つに分類可能
副業率×トラブル発生率で見る本業先の業界別のリスク分類は下記図の通り。
高リスク業界
副業率が高くてトラブル発生率も高い、トラブル総量が多いと考えられる業界
中リスク業界
高リスクと低リスクの中間
低リスク業界
副業自体が少ない、もしくはトラブル発生率が低く、トラブル総量が低い業界

| 業界(n=7,569) | 副業率 |
|---|---|
| 農林水産業 | 24% |
| 建設業 | 15% |
| 製造業 | 14% |
| 電気・ガス・水道業 | 13% |
| 情報通信業 | 15% |
| 出版・印刷業 | 12% |
| メディア・マスコミ・広告 | 13% |
| 運送・輸送業 | 13% |
| 商社・卸売・小売業 | 12% |
| 不動産業 | 20% |
| 調査業・シンクタンク | 15% |
| サービス業 | 16% |
| 教育業 | 17% |
| 医療・福祉 | 14% |
高リスク業界特徴
低リスク業界特徴
高リスク業界・低リスク業界の関係
低リスク業界のうち、教育業、医療・福祉は規範意識が上位。高リスク業界は、総論として「服務規定を遵守している」のスコアが全体と同水準であるものの、各論では「機密情報の流用」等が発生。リスク確認には個別具体での確認が必要であることが窺える。
調査結果① 各業界の副業・兼業実態
業界別 副業率
業界別の副業・兼業収入の平均を確認。
最も高いのが建設業で76,978円、農林水産業が76,618円で次ぐ。最も低いのは運送・輸送業、教育業で、どちらも5万円を下回り同水準。

| 業界(n=89,168) | 副業率 |
|---|---|
| 農林水産業 | 24% |
| 建設業 | 15% |
| 製造業 | 14% |
| 電気・ガス・水道業 | 13% |
| 情報通信業 | 15% |
| 出版・印刷業 | 12% |
| メディア・マスコミ・広告 | 13% |
| 運送・輸送業 | 13% |
| 商社・卸売・小売業 | 12% |
| 不動産業 | 20% |
| 調査業・シンクタンク | 15% |
| サービス業 | 16% |
| 教育業 | 17% |
| 医療・福祉 | 14% |
業界別 副業収入
業界別の副業・兼業収入の平均を確認。
最も高いのが建設業で76,978円、農林水産業が76,618円で次ぐ。
最も低いのは運送・輸送業、教育業で、どちらも5万円を下回り同水準。

| 全体(n=89,168) | 60,828 |
|---|---|
| 農林水産業 | 76,618 |
| 建設業 | 76,978 |
| 製造業 | 66,469 |
| 電気・ガス・水道業 | 64,591 |
| 情報通信業 | 63,684 |
| 運送・輸送業 | 48,471 |
| 商社・卸売・小売業 | 58,407 |
| 不動産業 | 68,782 |
| サービス業 | 57,714 |
| 教育業 | 46,948 |
| 医療・福祉 | 58,616 |
業界別 月間副業時間
業界別の副業・兼業時間の平均を確認。最も多いのが農林水産業で28時間。建設業、電気・ガス・水道業、25時間前後で次ぐ。最も少ないのが教育業で18時間、医療・福祉で19時間と、どちらも20時間を下回る。

| 全体(n=89,168) | 21.9 |
|---|---|
| 農林水産業 | 28.1 |
| 建設業 | 25.5 |
| 製造業 | 21.3 |
| 電気・ガス・水道業 | 24.8 |
| 情報通信業 | 20.8 |
| 運送・輸送業 | 23.0 |
| 商社・卸売・小売業 | 21.4 |
| 不動産業 | 22.6 |
| サービス業 | 23.7 |
| 教育業 | 17.8 |
| 医療・福祉 | 19.1 |
業界別の副業時間×副業収入の関係
業界別の副業・兼業時間と副業収入の関係性を確認。回帰線を下回る運送・輸送業については副業時間に対して収入が低く、回帰線を大きく上回る不動産業、建設業は副業時間に対しての収入が大きいことが読み取れる。

| 全体(n=89,168) | 副業時間 | 副業収入 |
|---|---|---|
| 全体 | 21.9 | 60,828 |
| 農林水産業 | 28.1 | 76,618 |
| 建設業 | 25.5 | 76,978 |
| 製造業 | 21.3 | 66,469 |
| 電気・ガス・水道業 | 24.8 | 64,591 |
| 情報通信業 | 20.8 | 63,684 |
| 運送・輸送業 | 23.0 | 48,471 |
| 商社・卸売・小売業 | 21.4 | 58,407 |
| 不動産業 | 22.6 | 68,782 |
| サービス業 | 23.7 | 57,714 |
| 教育業 | 17.8 | 46,948 |
| 医療・福祉 | 19.1 | 58,616 |
業界別の副業内容 農林水産業、建設業、製造業、・電気・ガス・水道業
農林水産業、建設業は本業と同業界での副業が20%を超えて多い一方、製造業ではその割合が13%と相対的に低い。電気・ガス・水道業は全く関係のない副業内容が上位。
業界別の副業内容 情報通信業、運送・輸送業、商社・卸売・小売業、不動産業
情報通信業、運送・輸送業、商社・卸売・小売業、不動産業では、本業との同業界での副業が25%以上と全業界でも高い。特に不動産業はそのバリエーションが多岐にわたる。
業界別の副業内容 サービス業、教育業、医療・福祉
教育業、医療・福祉では同業界の副業の従事率がとりわけ高く、30%を超える。一般的に言われている人不足を副業で賄っている実態が窺える。
調査結果② 各業界の副業・兼業許可実態
業界別 副業制度理解率
業界別の、副業許可制度の理解率を確認。最も理解率が高いのが情報通信業で唯一80%を超える。一方で運送・輸送業、商社・卸売・小売業では65%に留まり、制度浸透に課題があることが読み取れる。

| 全体(n=7,569) | 72.7% |
|---|---|
| 農林水産業 | 75.5% |
| 建設業 | 76.5% |
| 製造業 | 79.3% |
| 電気・ガス・水道業 | 79.1% |
| 情報通信業 | 82.1% |
| 運送・輸送業 | 65.5% |
| 商社・卸売・小売業 | 64.8% |
| 不動産業 | 77.6% |
| サービス業 | 69.1% |
| 教育業 | 71.1% |
| 医療・福祉 | 70.8% |
業界別 副業許可率
副業制度認知者に対し、制度としての副業許可の割合を聴取。届出のみでの許可が多いのがサービス業、教育業で、約60%。一方で、運送・輸送業、商社・卸売・小売業では30%を超え副業禁止の割合が多い。

| 全体(n=7,569) | 届出のみで副業可能 | 審査の上、許可制で副業可能 | 副業は原則禁止されている |
|---|---|---|---|
| 全体 | 50% | 28% | 22% |
| 農林水産業 | 49% | 35% | 16% |
| 建設業 | 41% | 30% | 28% |
| 製造業 | 45% | 33% | 22% |
| 電気・ガス・水道業 | 41% | 38% | 21% |
| 情報通信業 | 44% | 37% | 19% |
| 運送・輸送業 | 49% | 19% | 32% |
| 商社・卸売・小売業 | 51% | 19% | 30% |
| 不動産業 | 41% | 33% | 26% |
| サービス業 | 59% | 26% | 15% |
| 教育業 | 57% | 29% | 14% |
| 医療・福祉 | 55% | 24% | 21% |
業界別 副業寛容状況
業界別の、職場としての副業許容度を確認。農林水産業、サービス業、教育業、医療・福祉がいずれも「寛容だと思う」が40%前後と高く、それ以外の業界は30%前後に留まる。特に建設業、不動産業は26%前後と最も低い。

| 全体(n=7,569) | 寛容だと思う | やや寛容だと思う | どちらでもない | あまり寛容ではない | 寛容ではない |
|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 33.0% | 27.2% | 24.4% | 8.8% | 6.6% |
| 農林水産業 | 39.2% | 32.4% | 17.6% | 8.3% | 3.9% |
| 建設業 | 26.0% | 32.0% | 22.9% | 12.8% | 6.4% |
| 製造業 | 27.1% | 32.4% | 24.2% | 9.5% | 6.1% |
| 電気・ガス・水道業 | 29.5% | 27.3% | 29.5% | 10.0% | 5.5% |
| 情報通信業 | 27.0% | 34.2% | 23.0% | 9.7% | 5.9% |
| 運送・輸送業 | 29.9% | 18.5% | 30.3% | 9.6% | 11.1% |
| 商社・卸売・小売業 | 33.5% | 24.9% | 26.9% | 8.5% | 6.3% |
| 不動産業 | 26.3% | 31.1% | 23.0% | 15.1% | 3.4% |
| サービス業 | 40.2% | 22.8% | 26.5% | 5.0% | 5.5% |
| 教育業 | 40.2% | 27.9% | 20.0% | 6.5% | 6.2% |
| 医療・福祉 | 38.2% | 24.8% | 21.8% | 7.4% | 7.8% |
副業許可率と寛容状況の相関関係
制度としての許可率と職場の寛容度の関係では強い相関(0.88)が見られ、制度として許可されているほど、職場風土としての寛容度が高まることが定量的にも確認できる。

| 全体(n=7,569) | 届出のみで副業可能 | 寛容だと思う |
|---|---|---|
| 全体 | 50% | 33% |
| 農林水産業 | 49% | 39% |
| 建設業 | 41% | 26% |
| 製造業 | 45% | 27% |
| 電気・ガス・水道業 | 41% | 30% |
| 情報通信業 | 44% | 27% |
| 運送・輸送業 | 49% | 30% |
| 商社・卸売・小売業 | 51% | 33% |
| 不動産業 | 41% | 26% |
| サービス業 | 59% | 40% |
| 教育業 | 57% | 40% |
| 医療・福祉 | 55% | 38% |
副業によって得た不利益 業種別ランキング
業界共通してに「相談できる人がいない」「上司からの圧力」「昇進や仕事の機会を逃した」が上位。一方で農林水産業では「申請の拒否」、電気・ガス・水道業、情報通信業では「同僚からの嫌がらせ」が上位に入るなど、違いが見られた。
副業・兼業に対する組織の方針や上司・同僚の反応による、離職検討
副業・兼業に対する組織の方針により、離職検討をする労働者も一定存在。特に農林水産業従事者が最も多く、57%。製造業、情報通信業、建設業が同様に50%前後で次ぐ。

| 全体(n=7,569) | 副業対応による離職懸念 |
|---|---|
| 全体 | 40.1% |
| 農林水産業 | 56.9% |
| 建設業 | 47.6% |
| 製造業 | 51.9% |
| 電気・ガス・水道業 | 45.5% |
| 情報通信業 | 49.2% |
| 運送・輸送業 | 33.2% |
| 商社・卸売・小売業 | 32.0% |
| 不動産業 | 39.2% |
| サービス業 | 36.3% |
| 教育業 | 34.1% |
| 医療・福祉 | 33.8% |
調査結果③ 各業界の副業リスク総合評価
業界別 トラブル発生率
トラブル発生率が最も高いのは、農林水産業で50%で約半数。次いで、製造業、建設業、不動産業が40%台と高い一方で教育業、医療・福祉はトラブル発生率が21%と低く、リスクコントロールができている様子が窺える。
※会社員(正社員・契約・派遣社員) パート・アルバイトn=89,168

| 業界(n=89,168) | トラブルが発生したことがある |
|---|---|
| 農林水産業 | 52% |
| 建設業 | 40% |
| 製造業 | 46% |
| 電気・ガス・水道業 | 37% |
| 情報通信業 | 39% |
| 出版・印刷業 | 28% |
| メディア・マスコミ・広告 | 30% |
| 運送・輸送業 | 23% |
| 商社・卸売・小売業 | 29% |
| 不動産業 | 40% |
| 調査業・シンクタンク | 35% |
| サービス業 | 33% |
| 教育業 | 21% |
| 医療・福祉 | 21% |
業界別 副業率×トラブル率
低リスク業界のうち、教育業、医療・福祉は規範意識が上位。高リスク業界は、総論として「服務規定を遵守している」のスコアが全体と同水準であるものの、各論では「機密情報の流用」等が発生。リスク確認には、個別具体での確認が必要であることが窺える。

| 業界別(n=7,569) | 本業の副業に関する服務規定は遵守している |
|---|---|
| 全体 | 53.3% |
| 農業・林業・漁業・鉱業 | 58.3% |
| 建設業 | 50.4% |
| 製造業 | 52.6% |
| 電気・ガス・水道業 | 51.8% |
| 情報通信業 | 51.3% |
| 運送・輸送業 | 47.0% |
| 商社・卸売・小売業 | 48.8% |
| 不動産業 | 57.1% |
| サービス業 | 50.4% |
| 教育業 | 64.4% |
| 医療・福祉 | 59.1% |
| 業界別(n=7,569) | 本業で得た機密情報やプログラムコードを副業で利用したことがある |
|---|---|
| 全体 | 25.0% |
| 農業・林業・漁業・鉱業 | 40.2% |
| 建設業 | 31.6% |
| 製造業 | 31.8% |
| 電気・ガス・水道業 | 26.4% |
| 情報通信業 | 33.1% |
| 運送・輸送業 | 17.8% |
| 商社・卸売・小売業 | 17.3% |
| 不動産業 | 33.1% |
| サービス業 | 22.8% |
| 教育業 | 19.7% |
| 医療・福祉 | 20.0% |
高リスク業界のトラブル内容ランキング
高リスク業界もその業界特性により、トラブル内容は大きく異なる。農林水産業と製造業は過重労働起因のトラブルが上位で、特に製造業は過重労働の割合が高い。一方の不動産業はイメージダウンとなるような問題が上位と、傾向に違いが見られた。
(参考)業界別トラブル内容ランキング

業界別の副業申請とトラブル発生率の関係
トラブル発生率が最も高い農林水産業は副業届出率も高い。一方で同様に副業届出率が高い医療・福祉、教育業はトラブル発生率が抑えられている。届出有無別に業界別の副業内容がトラブル発生率に影響を与えていると考えられる。

| 業界(n=89,168) | 副業届出率 | トラブル発生率 |
|---|---|---|
| 農林水産業 | 43% | 52% |
| 建設業 | 30% | 40% |
| 製造業 | 37% | 46% |
| 電気・ガス・水道業 | 23% | 37% |
| 情報通信業 | 31% | 39% |
| 出版・印刷業 | 19% | 28% |
| メディア・マスコミ・広告 | 25% | 30% |
| 運送・輸送業 | 25% | 23% |
| 商社・卸売・小売業 | 29% | 29% |
| 不動産業 | 29% | 40% |
| 調査業・シンクタンク | 32% | 35% |
| サービス業 | 37% | 33% |
| 教育業 | 45% | 21% |
| 医療・福祉 | 36% | 21% |
属性情報
[居住地]全国、[年齢]20歳以上 65歳以下、[性別]男女