— 企業も知っておきたい 社員の副業申請・申告漏れのリスク —近年、副業を解禁する企業が増える中で、副業者の未申請や確定申告漏れが意外なところから発覚するケースも増えています。「確定申告は個人の責任」と考えがちですが、社内の噂から企業側に伝わることも。社員が適切な対応を取るために、どのようなリスクがあるのかを把握しておくことが重要です。この記事では、副業者の確定申告の必要性と、企業に与える影響、そして企業側ができる対策について解説します。1. 確定申告が必要なケースとは?まず、副業者が確定申告をしなければならないケースを押さえておきましょう。① 副業の所得が年間20万円を超える場合会社員の場合、副業の「所得」(=収入-経費)が年間20万円を超えると、確定申告が義務になります。申告漏れが発覚すると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。② 副業収入に源泉徴収がある場合ライター、講師、クリエイター業などの報酬は、源泉徴収(税金が差し引かれる制度)が適用されることがあります。この場合、確定申告をすれば払いすぎた税金が還付される可能性があります。企業の人事部としても、副業を認めている社員がこれらの基準を満たしているかどうかを理解し、適切に対応することが求められます。2. 副業者が確定申告をすべき理由副業者が確定申告を行うことには、単なる義務を超えたメリットがあります。① 税務リスクを回避できる申告漏れが発覚すると、無申告加算税や延滞税が発生し、最悪の場合は重加算税の対象となることも。さらに、税務署の調査対象となることで、企業側に問い合わせが入る可能性もあります。② 企業への影響を最小限にする社員の申告漏れが原因で、税務署から企業の人事部や総務部へ連絡が入ることがあります。この場合、企業としての対応が求められるため、事前に適切な税務知識を持ち、社内周知を行っておくことが重要です。③ 社会的信用を守る社員が確定申告を適切に行うことで、給与・報酬の透明性が保たれます。これは企業の健全なガバナンスにもつながります。3. 副業の話が広まり、会社に伝わったケース「副業が会社にバレることなんてない」と思っていませんか?実は、意外なところから副業の情報が広まり、会社に伝わるケースがあります。SNSの投稿や友人の会話から副業が発覚ある大企業に勤める社員が、実家で飼っている猫の動画を撮影・編集してSNSにアップしていました。海外でバズリ、その副業収入はなんと年間100万円以上。本人は特に隠していたわけではなく、SNSで「売上○○万円達成!」と投稿していたり、友人との飲み会で副業の話をしていました。しかし、これが思わぬ形で会社に伝わることに…。ある日、人事部の担当者が、別の社員からこんな話を耳にしました。「○○さん、結構稼いでるみたいですね!(動画で関連企業から広告費をもらう)「案件」の副業もOKなんですか?」会社の就業規則では、副業をする場合は事前に申請が必要でしたが、本人は申請していませんでした。このため、人事部が本人に確認を行い、最終的に副業の事実が発覚しました。また、副業収入についての確定申告も怠っており、過年度分も含めて税務署に申告することに。副業は意外なところから会社にバレることがあります。・ 住民税の金額が自社支給分の給与と合わない。同年代の社員に比べて高い。・ SNSや知人の会話から情報が伝わるこうした要因から、副業が会社に知られるリスクはゼロではありません。4. 企業ができる対応策① 副業者への事前周知を行う確定申告の基本ルールや、申告しないことで生じるリスクについて、社内で周知を行うことが有効です。特に、副業を認めている企業では、副業収入の有無を確認するプロセスを設けることも検討すべきでしょう。② 確定申告アプリの活用を推奨する確定申告の手続きは煩雑ですが、最近ではスマホアプリを活用すれば簡単に行えます。特に、会計バンクのスマホ会計「FinFin」は、副業者向けに特化した「副業かんたんモード」を提供しています。・源泉徴収票をスマホで撮影するだけで、自動でデータを読み込み・副業の確定申告に特化したシンプルな操作こうしたツールの活用を推奨することで、社員の申告漏れを防ぐ一助になります。 控除制度を活用した税負担軽減の提案確定申告をすることで、医療費控除やふるさと納税の控除を適用し、税負担を抑えることも検討しましょう。社員が正しく申告し、控除を活用できるよう、情報提供を行うことも企業のサポートとして有効です。5. まとめ副業者の増加に伴い、確定申告の重要性は企業にとっても無視できない問題になっています。・申告漏れが企業の人事部・総務部へ影響を及ぼすリスクがある・副業解禁企業は、確定申告のルールを社員に周知することが重要・アプリを活用し、社員のスムーズな申告をサポートするのも有効確定申告は個人の責任ですが、企業として適切な対応を取ることで、社員の税務トラブルを未然に防ぎ、企業の信頼性を高めることができます。寄稿 会計バンク株式会社 リンク先 https://app.adjust.com/1ln0uhen記事監修西原 憲一(にしはら けんいち)税理士西原会計事務所代表、(株)UFPF代表取締役 「FinFin」顧問税理士大阪市生まれ。大阪市立大学商学部卒。2000年に独立。税理士、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。法人・個人の税務会計、資産運用、相続・事業承継設計などマネー全般の実務に携わる。各種セミナー講師、書誌やWebでの執筆・監修など、全国で活動中。