副業制度担当者のお悩みトップ10・担当者を襲う社内問題と対策

1. はじめに

「副業制度担当者」という肩書を持つ方々が抱えている悩みについて、当記事で詳細に解説していきます。近年、多様な働き方が注目される中で、副業・兼業の制度を設ける企業が増えています。しかし、その一方で、副業制度の運用には多くの難しさが伴います。
副業制度の適切な運用は、企業の成長や社員の満足度に直結するため、担当者の役割は非常に重要です。本記事では、副業制度担当者が直面する主な問題10選を取り上げ、それぞれに対してどのようにそれを克服できるかを中心に解説していきます。
特に、厚生労働省が提供する「副業ガイドライン」は、制度運用の礎となるもの。その理解と実践は、副業制度の成功の鍵となります。
副業制度担当者の方々だけでなく、副業を考えている社員や経営者の方々にとっても有用な情報となることを目指しています。
2. 副業制度担当者の役割とは
(1) 厚生労働省副業ガイドラインの理解と普及

副業制度担当者としての大切な業務の一つは、厚生労働省が定める副業ガイドラインを理解し、それを社内で広く共有することです。2018年に改定されたモデル就業規則内の規定は原則と例外が180度逆転し、副業を原則認め、例外として制限項目を設ける内容になっています。(引用:【原則と例外の逆転】副業自由の原則と制限可能な副業4個条 厚労省モデル就業規則解説)
会社が制限を認められている例外副業の定義、届け出が必要な副業の範囲、申請・承認・報告流れなど、具体的な内容を理解することで、副業についての社内ルールを適切に設定し、運用することが可能となります。
ガイドラインに基づく副業のメリットやデメリット、そしてリスクについても説明し、社員一人ひとりが本業への支障なく副業を行える環境を整備することが大切です。
これらを踏まえた上で、会社が制限をおこなう副業範囲の設定や、過去の判例を参照しながら潜在的なリスクを評価し、それらを明確に社員に伝えることも重要です。
副業制度を設ける目的についても整理し、その目的が社内で共有されるように努めましょう。
(2) 副業制度の初期仕様の策定

副業制度担当者にとって、適切な運用と管理は極めて重要な役割を果たします。これには数々のステップや考慮点が含まれています。
3. 副業制度担当者が直面する主な問題10選

副業制度担当者としての役割は非常に幅広く、様々な課題や問題に日々直面します。それらの問題は、制度の運用や社員の理解、さらには経営層とのコミュニケーションに関わるものまで多岐に渡ります。こうした課題を正確に理解し、適切に対応することで、副業制度をスムーズに運営することが可能となります。
本セクションでは、副業制度担当者が特に直面するとされる「問題のトップ10」を取り上げ、それぞれの背景や原因、そして影響について詳細に探ることとします。
(1) 副業ガイドラインの理解が難しい
副業制度の運用と管理において、まず肝心なのは厚生労働省の副業ガイドラインを正しく理解し、それに準拠した運用を行うことです。ガイドラインは副業を正しく行うための道標となるもので、適切な理解がなければ、副業制度そのものの運用に支障が出るでしょう。
特に注意すべきなのは、企業側が副業に対して設けることのできる制限は、過去の裁判例に基づく特定の条件に限られる点です。
具体的には、会社側が勝訴した4つの項目のみが制限としてあげられています。これを超えて従業員の副業を過度に制限してしまうと、会社側が裁判においてその判断が違法とされる可能性があるので注意が必要です。
企業が副業制度を適切に運用するためには、ガイドラインの内容を深く理解し、それを基に適切な方針やルールを設定することが不可欠です。思い込みや誤解からくる過度な制限は、企業リスクを増大させるため、常に正確な情報と法的な視点を持ち合わせることが求められます。
また、二重雇用に関する労働時間通算の説明など、文章だけで完全に理解する事は非常に難しいです。専門士業への相談はもちろんですが、副業ガイドラインに記載の厚生労働省指定の管轄する労働基準監督署に口頭で要件を確認する事を強くおすすめします。
(2)経営層への説明難易度が高い

副業制度の運用と管理において、経営層への説明は重要な一歩です。しかし、残念ながら、経営層の中には、副業を一律で禁止できるという誤った認識を持っている場合が少なくありません。
前述の通り、就業規則で従業員の就業時間外の副業まで一律禁止することは無効とされています。副業禁止の立場の会社でも、実際は許可制の就業規則となっていることが多く、これにより制度が機能していない、または一貫性がない状態が生じるリスクが高まっています。
副業禁止企業の副業に関する就業規則例文
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社の許可を得た場合を除いては報酬の有無に関わらず、他の業務に従事し営利事業を営んではならない
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会社の許可なく、他社に就業した場合は懲戒解雇に処す
また、モデル就業規則内の副業規定でも会社に不利益を起こす副業を例外的に制限する会社を保護する規定でもあることを説明し、副業制度を設ける事が会社のリスクを拡大せず、事故防止につながる事を必ず説明しましょう。
さらに、副業を一律に禁止すると、社員が隠れて副業を進めることが増え、リスクが高まることも懸念されます。
副業制度を設け無いリスクを説明して、経営層の誤解を解き、副業制度の必要性を打ち出すことが、副業制度の適切な運用と管理の第一歩となります。そのため、経営層に対しては、法令に基づいた適切な前提理解から副業制度の意義と必要性をリスクベースで説明することが重要です。
単に人材の育成や多様な働き方を促進する観点だけでなく、法務面での正確な理解も持って経営層への説明を行うことを強く推奨します。
また外部の士業やコンサルタントなどに経営層への説明を依頼する事も理解促進の手段として有効です。
(3) 副業希望者とその上司や関係者間での認識統一と説明コスト

副業希望者、その上司、そして関係者間での認識の差は、副業ガイドラインの適切な活用が難しくなる要因となります。
上司の副業制度に対する理解度や期待する役割、部下の副業に対する見解など、上司の個別の能力によって制度の運用にポジティブやネガティブな影響が及ぶ可能性があります。
例えば、上司が部下の副業を否定的にとらえていれば、その下で働く社員が副業を開始した場合、承認を躊躇して実施が難しくなります。
上司を制度に関係させるならば、正しい理解と情報提供が必須です。
むずかしければそもそも上司を制度の管理にいれない事も選択肢としてかんがえましょう。
上司に対する部下の副業への注意喚起事例
株式会社IHIの副業制度の告知事例
上司への副業制度の取り扱いの事例として、公開されているIHI社の上司への制度説明が非常によくできている参考になる内容です。上司に対して、部下への副業対応への注意事項を会社主語を用いて明確に定め、注意喚起をしています。
評価については
・会社における能力・行動・成果によって公正におこなうこと
・兼業したことを理由に評価を下げることはないこと
を制度開始時に会社として宣言
上司には,以下の観点から,最大限に部下の兼業の意向を尊重するよう要請
・プライベート時間の活用は従業員の自由であること
・人材育成・キャリア支援の視点をもつこと
・本業に期待される効果があること
・兼業による不当な評価やハラスメントが禁止されていること

引用元:(配布資料(5) 事例報告|労働政策フォーラム「副業について考える」(2022年1月21)
株式会社フジクラの副業制度の告知事例
また、株式会社フジクラでは副業をする部下をもつ上司にも専用の研修を受講してもらう事で、IHI社同様に部下の副業への配慮や丁寧なコミュニケーションをうながしています。
副業者だけでなく上司にも受講してもらうことで、再説明の工数削減や誤解によるトラブルの未然防止など少ない管理工数で運用できております。
引用元:創業130年を超える老舗メーカーが副業解禁・株式会社フジクラ導入事例
(4) 従業員からの複雑な副業関連の問い合わせへの対応コストがかかる

新たに副業を始めたい従業員から、その適切な届け出の方法や内容についての問い合わせが人事部門に寄せられることが多いです。このような問い合わせは、時に複雑で、個別の事情やニュアンスを要するため、一律の回答では対応しきれないケースが増えてきます。
従業員自身で副業の内容が会社に届け出る必要があるのかの判断が難しいケースは特に多いです。理想的には、これは従業員自身の責任であり、外部の専門家などに相談すべき問題ですが、現実には副業を始めたばかりで、相談する場所や窓口を持たない従業員は多いです。その結果、副業に関する制度やルールを担当している部署や担当者が、従業員からのさまざまな相談窓口として機能することになります。これには、副業の内容や契約内容、時間の使い方など、実質的に個人的な相談とも取れる内容までが含まれることもあります。
さらに、副業に関する問い合わせには、会社の法務やセキュリティ面でのリスク、業界や業務内容における競合関係の確認、事業内容に基づいたコンプライアンスチェックなど、人事部門だけでは判断できない内容が多く含まれることも少なくありません。このようなケースでは、関連する部署や担当者との連携が必要となり、問い合わせの内容や量に応じて、社内での確認作業が増大するリスクがあります。
このように、副業に関する問い合わせへの対応は、一見単純な業務のように思えますが、深い知識や理解、そして多くの部署との連携を要する複雑な業務といえます。
副業制度担当者の運用ストレス
(5) 届け出された副業のリスク評価の品質管理

従業員からの副業届出は、企業にとってリスク管理の一環として非常に重要です。リスク評価は、会社側の制限が認められる4つの基準に基づき実施されます。これには、副業が企業の利益に影響を及ぼす可能性、従業員の副業内容が本業との兼ね合いで問題がないか、反社会的な団体との関連がないか、そして会社のコンプライアンスに適合しているかなど、多方面の観点からの確認が含まれます。また、従業員の労働時間が過重でないか、雇用契約上の問題が生じる可能性がないか、といった点も検討の対象となります。
副業に関する事故や問題が発生した場合、その責任は基本的に従業員個人にあります。しかし、会社側のリスク評価の方法や観点によっては、労使間のトラブルの原因となることも考えられます。このようなリスクが伴うため、副業制度の運用は非常にストレスのかかる業務と言えます。実際、このようなリスクの管理を継続的に行うことは、担当者にとって大きな負担となり、異動や退職の原因となる場合もあります。
また、一定のリスクが高まる種類の副業もありますが、それを完全に禁止することは難しく、従業員のプライベートを過度に制限することや、職業差別に繋がる恐れもあります。そのため、企業は従業員の権利を尊重しつつ、高度な配慮を持って副業制度の運用を行う必要があります。企業はこの点を十分に認識し、副業制度の適切な運用と担当者のサポートを考える必要があります
(6) 従業員の副業に問題がある場合の対応
従業員の副業に問題が生じた時、対応が遅れると企業全体への影響が懸念されます。具体的な事例とその対策を以下に示します。
| 発生するケース | 対策 | | --- | --- | | 会社への無届け副業がわかったとき | 副業ガイドラインに従い、該当者に対して再度の届け出を求める。 | | 無届けの副業が会社制限に該当する内容だったとき | 該当者に対して副業の中止を要請。継続的な違反がある場合は、実害の実態を調査する。 | | 無届けの副業で内部不正や会社資産の横領が発生したとき | 該当者を速やかに調査し、必要に応じて法的措置を取る。内部監査やセキュリティ対策の強化を検討する。 | | 承認した副業内容が会社制限に該当するものに変化していたとき | 再評価の実施と、該当者に再届け出を求める。必要に応じて、副業ガイドラインの見直しや再教育を提供する。 | | 承認した副業で情報漏洩などの実害が発生したとき | 該当の従業員との緊急の面談を実施し、原因の究明を行う。情報管理の強化や再教育の実施を検討する。 |
従業員の副業による問題や実害が生じた場合、まずはその原因や背景を正確に把握するための調査を行います。事実関係を明らかにした上で、該当する従業員に改善を促し、そのプロセスをサポートします。特に初めてのケースや軽微な問題の場合、注意喚起や指導を段階的に実施することが重要です。
しかし、注意喚起を繰り返しても改善が見られない、または継続的な問題行動が確認される場合は、会社の副業ガイドラインに従い、必要な制限や処分を検討します。会社への実害の程度に応じて、従業員の副業に対する制限や禁止、さらには悪質な場合の損害賠償請求など、状況に応じた対応が必要となります。
この際、突然の過度な対応や制裁は、従業員との関係の悪化や労使トラブルの原因となる可能性があるため、慎重な実態調査と適切なコミュニケーションを基盤に対処する必要があります。企業の信頼や品質を維持するため、副業ガイドラインの徹底と、それを取り巻く適切な対応体制の構築が求められます。
(7) パフォーマンスへの影響 業務と副業の両立が困難な社員が発生した場合の措置

従業員が副業をしている場合、その活動が本業のパフォーマンスに影響を及ぼしているかどうかは、非常に重要な考察ポイントとなります。パフォーマンスの低下の原因が明確に副業にあると判断される場合、例えば過労による遅刻や居眠りなど、具体的な問題が明らかになればその是正が求められます。
しかしながら、業務のアウトプットの質や上司との関係など、本業の内部要因も関係している場合があります。その際に副業を即座に問題視するのは早計であり、真の原因を事実ベースで特定する慎重な対応が必要です。
パフォーマンスへの影響:業務と副業の両立が困難な場合の対応
主業務と副業の両立が難しいと感じる従業員に対して、次のような措置を考慮・実施することが考えられます。
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カウンセリング:従業員の現状の理解を深め、適切な助言や支援を提供する。人事部門、直属の上司、あるいは社内外のカウンセリング専門家との面談を通じて対応を検討します。参考:働き方・休み方改善コンサルタント
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時間管理のサポート:効率的な時間の使い方を学ぶための外部ツールやセミナーの提供を検討する。参考:厚生労働省働き方・休み方改善ポータルサイト
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副業の見直し:副業が主業務への影響を明確に及ぼしていると判断される場合、その内容や時間の配分を再評価する。この際、従業員の意向も尊重し、共に最適なバランスを見つけることを目指します。
以上の対策は、個々の状況や背景に応じて適切に適用されるべきものです。従業員の健康やモチベーションを維持することは、組織全体の生産性や働きがいの向上に直結するため、副業とのバランスを適切にとることが求められます。
最終的に、従業員が副業を持つことは、新しいスキルや経験を持ち込むことができる大きなメリットがありますが、それと同時に適切なバランスを取るためのサポートやフォローも重要です。企業としては、副業が業務の質やパフォーマンスに悪影響を及ぼさないように、継続的な対話やサポートを提供していくことが求められます。
(8) 副業による社内の人間関係の悪化や告発対応

一方、告発が生じた場合の対応も緊急性が求められます。社員が会社の資産や従業員同士のネットワークを不正利用するという行為は、企業のガバナンスに直接的な影響を及ぼす恐れがあります。これは、企業内外の信用やイメージを低下させるだけでなく、経営上の大きなリスクとなり得ます。
告発があった場合、事実関係を正確に調査し、問題が確認された場合は適切な指導や罰則を行う必要があります。また、不正利用のリスクを未然に防ぐための制度の見直しやアナウンスも必要となるでしょう。これにより、従業員一人ひとりが企業のルールやガバナンスを理解し、それを守る意識を持つことが期待されます。
副業に関するガイドラインの策定や啓発活動によって、社内の人間関係の健全性や企業のガバナンスを守ることは、副業を認める企業の持つ重要な責任となります。
従業員の自由と企業のルールを適切にバランスさせ、双方がwin-winの関係を築くことが、長期的には企業の成長に繋がるでしょう。
また、副業が原因となる社内の人間関係の悪化は、精神的なストレスや作業効率の低下といった問題を引き起こします。特に、副業での成功体験を自慢する者や、副業により仕事への取り組みが疎かになる者に対する周囲の反感は、深刻な対人問題を生む可能性があります。
対策として、副業に関する情報は必要最低限に留め、副業が主業務に影響を及ぼさないことを明示するルール作りが重要です。また、副業による自己啓発は評価する一方で、それが他人への自慢材料にならないような適切なガイドライン作りも求められます。これらの対策は、社内コミュニケーションの健全性を保つために不可欠です。
副業を推奨しすぎてリスク対策がおざなりになった場合、会社としてガバナンスの低さが露呈し、本業の信用が失墜しかねません。またリスクを適切に管理し、健全に副業を実施している従業員や本業に集中している関係者からの本業先への失望を招きます。
(9) 会社への深刻な悪影響が確認された際の副業者への対応

従業員の副業活動が会社への深刻な悪影響を及ぼす場合、迅速かつ的確な対応が求められます。具体的な対応策として以下の手段をとることが考えられます。
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必要な調査と実態把握:問題発生の原因や背景を詳細に調査し、事実関係を確定します。
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処分の実施:確認された実害の内容や度合いに応じて、懲戒処分や給与のカット、業務停止などの対応をおこないます。
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損害賠償の請求:会社に対する損害が確認された場合、副業者個人への損害賠償を求めることがあります。
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刑事事件の対応:犯罪行為が確認された場合、警察に通報し刑事事件として対応します。
トラブルを大きくしたくない、または内部の和を保つために処罰を避ける姿勢を取る会社や担当者も存在します。しかし、このような対応には次のようなリスクが潜んでいます。
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会社の信用失墜:問題行為が外部に公になった際、会社のブランドや信頼が失墜する恐れがあります。
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内部のモラルの低下:対応を怠ることで、他の従業員の業務への取り組みやモチベーションの低下を招く可能性があります。
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法的リスク:関連する法律や規定の遵守が求められ、対応を怠ることで法的なトラブルに発展する危険性があります。
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トラブルの再発:問題行為を放置することで、同じ従業員や他の従業員による同様のトラブルが再び発生する可能性が高まります。
問題の根本を解決せず一時的な平和を保つことは、長期的には更なるトラブルや信頼の喪失を招くことが考えられます。そのため、適切な対応と継続的なコミュニケーションが不可欠となります。
(10) 副業制度の届出範囲の改善や見直し、必要な監査と復旧

会社の事業内容や体制変更による変化は、副業制度の運用において重要な改定要因となっています。従業員の部署の異動や業務内容の変更といった会社側の事情が変わることで、以前に許可されていた副業が現在の業務と競合する可能性が出てきます。このような状況を的確に管理するためには、定期的な監査や評価が不可欠です。
次に、従業員自身の副業内容の変化や新たな副業の実施なども考慮しなければなりません。従業員が新しい種類の副業を始める場合や、現在の副業が新たな事業領域と競合する可能性が出てきた場合、再評価が求められることがあるでしょう。
また、最近では多様な働き方が増えてきており、従来の副業の概念にない新しい形態の副業が次々と出現しています。例えば、オンラインでのスポットコンサルティングや教育サービス、デリバリープラットフォームなどの新しい種類の副業が増えてきているのがその一例です。
事故事例として、公務員のような特定の職種においては、従業員が私的な範囲で行っていた活動が、第三者の告発や通報を受けて改めて「副業」として問題視されるケースが増えてきています。これは、副業の定義や範囲が十分に明確でないことが原因とも言えます。このような問題を未然に防ぐためには、副業の定義や範囲を明確にし、従業員に対して届け出するべき範囲を告知する活動が不可欠です。特に公務員の場合、その職務との関連性や公の利益を損なう可能性があるため、十分な注意とガイダンスが求められます。
これらの要因を踏まえると、副業制度の運用には、社会の変化や新しい働き方、組織の変動に柔軟に対応することが求められます。大規模な組織や複数の事業を展開している会社、さらには公的な職種を持つ組織においても、これらの変動を迅速に把握し、副業制度を適切に運用するための定期的な監査や評価が欠かせません。
結論として、副業制度の運用は、会社の事情や個人の副業内容の変化、新しい副業の出現、などの特定の職種、業種におけるトラブルを考慮に入れながら、常に最新の状況を反映させた運用を心がけることが必要となっています。
4. 各問題に対する対策
(1)厚生労働省”副業・兼業の推進に関するガイドライン”の熟読

副業・兼業に関する制度を実施するにあたって、正確な情報とその解釈が必要不可欠です。そのため、最も信頼性が高く、具体的な指針となる資料は厚生労働省が発表している”副業・兼業の推進に関するガイドライン”です。このガイドラインは、副業・兼業の取り組みを進める上での基盤となる文書であり、まずはこれをしっかりと読み込むことがスタートラインとなります。
一読しただけでその全てを理解するのは難しいため、その理解を一人で行うのではなく、法務担当者や外部の専門家とともに熟読し、解釈や適用のポイントについて議論を深めることがおすすめです。
また、ガイドラインの理解を全社員と共有するために、セミナーやワークショップの開催は非常に効果的です。これにより、社員一人ひとりがガイドラインの内容を正確に理解し、自らの行動や判断に役立てることができるようになります。
そして、ガイドラインに従った社内の副業・兼業ルールを明文化し、これを社員全員がいつでも確認できるような形で公開することが重要です。このルールは、社員の行動指針となるものであり、明確なルールがあることで、社員も安心して副業・兼業の活動を届け出することができます。
総じて、厚生労働省のガイドラインの読み込み、それに基づいた社内ルールを作成し、これを全社員と共有することで、安全かつ効果的な副業・兼業の制度の実施が可能となります。
(2)社内で副業制度を適切に運用するための戦略

適切な副業制度の運用は、社内の安全な働き方の確保や労働者の生産性向上に寄与します。副業の際のトラブルや業務への悪影響を防ぐために、以下の戦略の採用とそれに伴う具体的な内容を示します。
| 戦略 | 内容 |
|---|---|
| 副業規程の策定 | 厚生労働省のガイドラインに基づき、具体的な社内規程を作成します。 |
| 教育・研修 | 社員が副業規程を理解し遵守するための定期的な研修やワークショップを実施します。 |
| 申請・承認プロセス | 公平で透明な手続きをとるための申請フォームの提供や承認基準の明示等を行います。 |
| リスク監査 | 異動タイミングなど定期的に従業員の副業内容の再診断を行い、業務との競合やその他の本業へのリスクを評価します。 |
| 問題対応策 | 副業から生じるトラブルや問題に対する迅速な対応策や予防策を明確にし、社員に周知徹底します。 |
これらの戦略を実施することで、副業を行っている従業員が安心して業務を遂行するとともに、会社としても副業によるリスクを最小限に抑えることができます。特に、副業規程の策定や研修の実施は初期段階での取り組みとして特に重要です。従業員一人ひとりが規程の内容を正確に理解し**「会社が禁止・制限しなくてはいけないリスクの高い副業」**をイメージできるようサポートします。それに従って行動することで、社内でのトラブルを未然に防ぐことが期待できます。
5. まとめ
副業制度を社内で適切に運用するためには、それが原因となるトラブルをいかに未然に防ぐかが重要です。以下、特に注意が必要なトラブルとその対策を示します。
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社内での情報格差:副業に関するガイドラインやその他の情報の不均等な配布は誤解や混乱を招く可能性があります。定期的な情報の公平な共有、そして社員からの疑問に対するQAセッションの実施は必要不可欠です。
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副業による本業への影響:副業の過度な負荷が本業に影響を与えたり、過重労働の原因となることが考えられます。従業員自身が適切な時間管理を心がけ、過労死ラインを超えないようなセルフチェックを定期的に行うことが大切です。会社としても、健康や安全に配慮した働き方を推進し、従業員に対してその意識を高める啓発活動を行うことが求められます。
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副業との利益相反:競合先企業だけでなく、潜在的な競合先での副業や、本来本業先で行うべき業務を副業として行うケースなど、利益相反の可能性が潜むケースは多岐にわたります。明確なガイドラインや事故情報(リスクインテリジェンス)を活用し、これらのリスクを認識することが重要です。従業員には、自らの副業が会社の利益に対してどのような影響を及ぼす可能性があるのかを常に意識し、適切な判断を下すように指導する必要があります。
これらの対策を実施することで、社内での副業制度を効果的かつ安全に運用していくことが期待されます。
執筆者
小林大介 シニアリスクリサーチャー ISO30414リードコンサルタント 株式会社フクスケ代表VOYAGEGROUP(現CARTA HOLDINGS)新卒入社。株式会社サポーターズの立ち上げに関わる。同社で支社長経験後、副業経由でVTuber事業を手掛けるスタートアップにHRマネージャーとして転職。組織急拡大の中、ニューリスクを複数経験。2019年7月に株式会社フクスケを...