SNS型投資詐欺の手口と対策を解説|社員の副業リスクにどう備える?
社員の副業が広がる中、SNSを悪用した投資詐欺が企業にとって新たなリスクとなっています。これは社員個人の問題に留まらず、生産性の低下や情報漏洩につながる可能性があるからです。
本記事では、巧妙な詐欺の手口と、企業が社員を守るために講じるべき具体的な対策を解説します。
SNS型投資詐欺とは

近年、SNSを悪用した投資詐欺の被害が深刻化しており、企業の社員がターゲットにされるケースも少なくありません。ここではまず、SNS型投資詐欺の基本的な特徴と、なぜ企業がこの問題に向き合うべきなのかを解説します。
SNS型投資詐欺の特徴
SNS型投資詐欺は、LINEやInstagramなどのSNSで巧みに投資話を持ちかけ、金銭をだまし取る詐欺のことです。詐欺師はまず、魅力的なプロフィールや、著名人になりすました偽の広告などを通じてターゲットに接触します。
そして、専用の投資アプリやサイトに誘導し、最初は少額の投資で利益が出ているかのように見せかけ、被害者を心理的に安心させ信用させます。この偽の成功体験を信じ込ませることで、被害者は疑うことなく、より高額な資金を追加で振り込んでしまいます。
しかし、最終的に利益を出金しようとすると、「手数料」や「違約金」といった様々な名目でさらなる支払いを要求され、お金は一切引き出せず、連絡も取れなくなってしまうのです。
なぜ企業が関係あるのか
一見、社員個人の問題だと思われがちなSNS型投資詐欺ですが、企業にとっても決して他人事ではありません。社員が詐欺被害に遭うと、多額の金銭を失うだけでなく、精神的にも大きなダメージを受けます。
その結果、仕事への集中力を欠いてしまい、生産性の低下につながる恐れがあるのです。さらに、詐欺師に誘導される過程で、業務用のパソコンやスマートフォンに不正なアプリをインストールしてしまった場合、顧客情報や社内の機密情報が外部に漏洩するリスクも潜んでいます。
被害の大きさに動揺した社員が、会社の資金に手を出してしまうといった、より深刻な事態に発展する可能性もゼロではありません。このように、SNS型投資詐欺は社員の生活を脅かすだけでなく、企業の安定経営をも揺るがしかねない重大なリスクなのです。
なぜSNS型投資詐欺が増加しているのか

SNS型投資詐欺は、なぜこれほどまでに深刻な問題となっているのでしょうか。その背景には、単に詐欺の手口が巧妙になっているだけでなく、私たちの社会や生活様式の変化が複雑に絡み合っています。
ここでは、詐欺が増加している背景を3つの視点から解説します。
SNSの普及とアルゴリズム
今やほとんどの人がスマートフォンを持ち、日常的にSNSを利用する時代になりました。SNSには、ユーザーの検索履歴や興味関心を分析し、その人に最適化された情報を表示する「アルゴリズム」機能が備わっています。
この便利な仕組みを、詐欺師は巧みに悪用します。「副業」や「資産運用」といったキーワードに関心を示す社員のタイムラインに、あたかも有益な情報であるかのように偽の投資広告を繰り返し表示させるのです。
投資への興味関心の高まり
終身雇用制度の崩壊や年金問題など、将来への経済的な不安から、多くの人が資産形成の重要性を認識するようになりました。政府もNISA(少額投資非課税制度)などを通じて国民の投資を後押ししており、副業の一つとして投資を始める社員も増えています。
しかし、投資に関する知識や経験が十分でないまま「手軽に儲けたい」という気持ちが先行すると、詐欺師の格好のターゲットになりかねません。「元本保証」や「絶対に儲かる」といった甘い言葉で、正常な判断力を失わせるのが詐欺の常套手段です。
こうした投資への関心の高まりが、皮肉にもSNS型投資詐欺が広がる土壌となっているのです。
コロナ禍以降の孤独感と収入不安
コロナ禍を経て、リモートワークの導入など働き方は大きく変化しました。通勤の負担が軽減される一方で、同僚と顔を合わせる機会が減り、コミュニケーション不足による孤独感や、社会からの孤立を感じる社員は少なくありません。
同時に、経済の先行きに対する不透明さから、現在の収入だけでは将来が不安だという気持ちも高まっています。詐欺師は、こうした人々の心の隙間に巧みに入り込んできます。
SNS上で親身に相談に乗るふりをしたり、「あなただけは大丈夫」といった特別な言葉をかけたりして心理的な距離を縮め、冷静な判断ができない状況に追い込むのです。
典型的なSNS型投資詐欺のパターン

SNS型投資詐欺には、いくつかの典型的なパターンが存在します。その手口は年々巧妙化しており、まさか自分が、と思うような人でも被害に遭う可能性があります。
ここでは、特に被害の多い代表的な手口を4つ紹介します。
著名人や投資家になりすました詐欺
著名人や実在する投資家の名前と写真を無断で使用した、偽の広告から始まる手口は、SNS型投資詐欺の典型的なパターンです。FacebookやInstagram上で、「〇〇氏が推薦する」「無料で投資を教えます」といった、誰もが知る著名人の社会的信用を悪用した広告を見かけたことはないでしょうか。
こうした広告をクリックさせ、LINEの投資グループなどに誘導するのが詐欺師の狙いです。グループ内では、著名人本人やアシスタントになりすました人物が、巧みな話術で参加者を信用させ、偽の投資サイトやアプリへ入金させます。
最初は利益が出ているように見せかけるため、被害者は詐欺だと気づくことなく、次々とお金を振り込んでしまいます。その結果、一度の被害額が1,000万円を超えるような、深刻なケースも後を絶ちません。
ディープフェイクによる偽動画
AI技術の進化は、投資詐欺の手口をさらに巧妙化させています。その一つが、AIを使って人物の顔や声を合成し、本物そっくりの偽動画を作成する「ディープフェイク」技術です。
詐欺師はこの技術を悪用し、有名な実業家や経済評論家が、あたかも特定の投資商品を絶賛しているかのような偽の動画を作り出します。動画の中で本人が流暢に語りかける姿は非常に説得力があり、写真だけのなりすましよりもはるかに信じやすく、多くの人が騙されてしまいます。
「本人が動画で勧めているのだから間違いない」という思い込みが、深刻な被害につながるのです。たとえ動画であっても、安易に信用せず、情報の発信元が本当に公式なものかを確認する慎重さが不可欠です。
ロマンス詐欺型(恋愛感情+投資)
SNSやマッチングアプリで知り合った相手と親密になり、恋愛感情や信頼関係を悪用して金銭をだまし取る手口です。詐欺師は、外国人やエリートビジネスマンなどを装い、甘い言葉で毎日のように連絡を取り、相手の孤独感や好意につけ込んで関係を深めていきます。
そして、「二人の将来のために一緒に投資をしよう」「これを乗り越えれば結婚できる」などと、将来を約束するような言葉で巧みに投資話を持ち掛けます。被害者は、相手を深く信用してしまっているため、投資話に疑いを抱きにくく、言われるがままにお金を振り込んでしまいます。
恋愛感情が絡むことで、周囲からの忠告も耳に入りにくくなり、被害に気づいたときには、すでに多額の資産を失っているという深刻なケースが後を絶ちません。
LINE/チャットアプリでの“投資グループ”詐欺
SNSの広告やダイレクトメッセージをきっかけに、LINEのオープンチャットや非公開グループに招待される手口も多く見られます。これらのグループには、主犯の他、アシスタントや、多数のサクラなどの役割分担があるのが特徴です。
サクラたちは、「先生のおかげでこんなに儲かりました」「新しい車が買えました」といった成功体験を次々と投稿し、グループ全体が利益を上げているかのような雰囲気を巧みに演出します。この集団心理を利用した巧妙な演出により、被害者は「自分も早く始めなければ損をする」と焦りを感じ、冷静な判断力を失ってしまうのです。
そして、指示されるがままに偽の投資プラットフォームへ入金し、最終的には多額の資金をだまし取られてしまいます。
SNS型投資詐欺に遭わないための予防策
巧妙化するSNS型投資詐欺から社員を守るためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか。
ここでは、社員が個人で実践できる基本的な予防策と、企業として取り組むべき啓発活動のポイントを解説します。
SNSで資産状況・副業収入などの情報を発信しすぎない
SNS型投資詐欺に遭わないための基本的な対策として、社員がSNS上で安易に自身の経済状況を発信しないよう注意を促すことが重要です。特に、以下のような情報の公開は詐欺師の標的になりやすいため、避けるべきです。
-
資産や副収入の具体的な金額
-
「儲かった」といった投資の成功体験
-
裕福な生活を匂わせる投稿
-
「#副業」「#投資」などの多用
詐欺師は、このような投稿を常に監視し、お金に余裕がありそうな人や、投資に興味がある人をターゲットとして狙っています。
社内での啓発活動を継続する
社員個人の注意喚起だけでは、巧妙化する詐欺を完全に防ぐことは困難です。企業として、社員を守るための積極的な情報提供と環境整備が求められます。
-
定期的な研修やセミナーの実施
-
社内報やポータルサイトでの注意喚起
-
専門家を招いた勉強会の開催
-
気軽に相談できる窓口の設置
これらの啓発活動は、一度きりで終わらせるのではなく、定期的に継続することが重要です。最新の詐欺手口や対策を繰り返し周知することで、社員のリテラシーを高め、被害を未然に防ぐ社内文化を醸成することができます。
【まとめ】SNS型投資詐欺から社員を守り企業リスクを回避する
SNS型投資詐欺は、社員個人の資産を脅かすだけでなく、生産性の低下や情報漏洩など、企業経営に直結しかねない深刻なリスクです。
企業は詐欺の巧妙な手口を社内で共有し、継続的な啓発活動によって社員のリテラシーを高めていくことが求められます。
社員を守るための主体的な取り組みこそが、安心して働ける環境を育み、企業の健全な発展を支える礎となるでしょう。
運営