従業員の副業が広がる今、SNSなどで急増する「タスク詐欺」をご存じでしょうか。「簡単な作業で高収入」という謳い文句に、従業員が騙されるケースが後を絶ちません。本記事では、最新の手口から返金対応まで、人事担当者が知っておくべきことを解説します。タスク詐欺とは?|企業も無関係ではいられない副業詐欺副業への関心の高まり、SNSなどを中心に「タスク詐欺」が急増しています。これは、「いいねを押すだけ」といった簡単な作業で高額な報酬がもらえると謳い、最終的には保証金などの名目で金銭をだまし取る悪質な副業詐欺です。業への関心の高まり、SNSなどを中心に「タスク詐欺」が急増しています。これは、「いいねを押すだけ」といった簡単な作業で高額な報酬がもらえると謳い、最終的には保証金などの名目で金銭をだまし取る悪質な副業詐欺です。ここでは、まずタスク詐欺の基本的な知識を深めるために、以下の3点を解説していきます。 タスク詐欺=「簡単な作業で稼げる」は嘘タスク詐欺とは、SNSなどを通じて「簡単な作業で高収入」を謳い文句に勧誘してくる副業詐欺の一種です。その手口は、「指定されたSNS投稿に『いいね』を押す」「動画を視聴してスクリーンショットを送る」といった、誰にでもできる簡単な作業(タスク)を指示します。そして、最初は実際に数百円から数千円といった少額の報酬を支払うことで、本当に稼げる仕事なのだと信用させるのが特徴です。しかし、これは被害者を安心させ、最終的に高額な金銭をだまし取るための巧妙な罠に過ぎません。消費者庁も、このような手口について注意喚起を行っており、副業を探す人々の心理につけ込んだ悪質な詐欺だといえます。 タスク詐欺の典型的な流れタスク詐欺は、被害者を信用させるための巧妙なステップを踏んで金銭をだまし取ります。その典型的な流れは以下の通りです。手口詳細SNSからLINEへ誘導「スマホで高収入」などの広告で興味を引く簡単な作業で信用させる「いいね」を押すなどの簡単な作業を指示高額な入金を要求高額報酬のタスクを提示このように、最初は誰にでもできる簡単な作業で信用させ、心理的なハードルを下げさせた後に高額な金銭を要求するのが特徴です。少しでも怪しいと感じたら、すぐに関係を断ち切ることが被害を防ぐために重要です。 タスク詐欺の相談件数は増加傾向タスク詐欺に関する被害相談は、近年深刻な社会問題となっており、その相談件数は増加の一途をたどっています。国民生活センターの発表によると、「簡単なタスクを行う副業」に関するトラブルの相談件数は、2020年度の1,341件から2023年度には3,694件へと、わずか3年間で約2.75倍に急増しました。引用:独立行政法人 国民生活センターさらに深刻なのは、被害額の高額化です。2020年度には約28万円だった平均契約購入金額が、2024年度には約106万円にまで跳ね上がっています。これは被害がより深刻化していることを示しており、手口も巧妙になっていると考えられます。こうした状況を踏まえ、人事担当者としては、従業員が副業詐欺の被害に遭うことがないよう、社内での注意喚起を徹底することが重要です。 実際にあったタスク詐欺の事例タスク詐欺は、私たちの身近なところで巧妙な手口を使い、多くの被害者を生み出しています。最初は誰でもできる簡単な作業で信用させ、最終的に多額の金銭をだまし取るのが特徴です。ここでは、実際にあったタスク詐欺の代表的な事例を2つ紹介します。 SNSの広告から誘導。100万円騙し取られるこのケースの被害者は、SNSで見つけた「安全に稼げる」「誰でも簡単」という副業の広告に興味を持ち、軽い気持ちで登録してしまいました。仕事内容は、指定された投稿に「いいね」をするだけの簡単なもので、最初は実際に報酬が支払われたため、すっかり信用してしまったといいます。しかし、より高額な報酬を得るための「タスク」に参加するためとして、次々と費用の支払いを要求されました。相手を信用していたことや、「損はしない」と思い込んでしまったことから、最終的に合計で約100万円をだまし取られてしまいました。引用:カンテレNEWS 「いいね」を押すだけで高額報酬「『いいね』を押すだけで稼げる」という手口も、タスク詐欺の典型的な事例として多くの被害が報告されています。詐欺グループは、最初は数百円程度の少額な報酬を実際に支払い、「本当に稼げる」と被害者に錯覚させるのが共通した特徴です。その後、「より高額な報酬が得られる上級タスク」や「VIP会員」になるための保証金、システム利用料といった名目で、数十万円から数百万円もの金銭を要求してきます。支払いをためらうと、「これまでの報酬もすべて無効になる」「多額の違約金が発生する」などと脅し、さらに支払いを迫るのが手口です。引用:ニッポン消費者新聞 副業詐欺の代表的な手口従業員を狙う副業詐欺には様々な手口が存在し、その手口は巧妙で、誰もが被害に遭う可能性があります。企業として従業員を守るためにも、代表的な手口を把握しておくことが重要です。ここでは、特に注意すべき3つの手口について解説します。 高額な情報商材の販売副業詐欺の代表的な手口として、高額な情報商材の販売が挙げられます。これは、「誰でも簡単に稼げるノウハウ」や「必ず儲かる秘密の手法」などと謳い、実際には価値のない情報を数十万円から数百万円といった高額で売りつける手口です。購入してみると、内容はインターネットで誰でも調べられるような薄い情報であったり、再現性のない精神論ばかりであったりするケースがほとんどです。広告で謳われているような収益を上げることは極めて困難であり、購入後にさらに高額なサポート契約などを勧誘されることも少なくありません。 スマホでできる簡単副業という名目の詐欺「スマホだけで手軽に始められる」という謳い文句は、副業詐欺で頻繁に用いられる典型的な手口です。「スタンプを送るだけ」「簡単なデータ入力」など、特別なスキルが不要で、誰でもすぐに始められると魅力的にアピールしてきます。しかし、仕事を始めるにあたり、「登録料」や「サポート費用」といった名目で、数万円から数十万円の高額な金銭を要求されるケースがみられます。一度支払ってしまうと、その後連絡が取れなくなったり、様々な理由をつけて追加費用を請求されたりすることがほとんどです。出会い系・マッチングアプリの“サクラ副業”出会い系サイトやマッチングアプリで、異性のふりをしてメッセージをやり取りし、相手にポイントを消費させて報酬を得る「サクラ」のバイトも、悪質な副業詐欺の一種です。「メールをするだけで稼げる」と勧誘されますが、実際には報酬が支払われないばかりか、登録料やマニュアル代と称して金銭を請求されることがあります。さらに、このような行為は、サイト利用者を騙す詐欺行為そのものであり、意図せず詐欺の片棒を担いでしまうことになります。タスク詐欺被害に遭った時の返金方法万が一、従業員がタスク詐欺の被害に遭ってしまった場合、企業としてどのようなサポートができるでしょうか。被害金の返還は決して簡単ではありませんが、迅速に行動することで被害を最小限に抑え、回復の可能性を高めることができます。ここでは、被害に遭った際にまず取るべき具体的な返金方法について解説します。 金融機関に連絡し、口座凍結を要請するもし従業員がタスク詐欺の被害に遭ってしまった場合、まず行うべきは、振込先の金融機関に連絡し、詐欺に利用された口座の凍結を要請することです。警察への被害申告と並行して、金融機関に連絡することで、口座が犯罪に利用されたとして入出金を停止させることができます。口座が凍結され、中にお金が残っていれば、後述する「振込詐欺救済法」の手続きによって、被害者に分配される可能性があります。しかし、詐欺グループはすぐに資金を移動させてしまうため、被害回復の可能性を高めるには、一刻も早い行動が不可欠です。 振込詐欺救済法を活用する口座凍結後に活用できる可能性があるのが、「振込詐欺救済法」です。これは、犯罪に利用された口座に残っている資金を、被害者に分配するための法律です。ただし、この制度を利用する際には、以下の点に注意が必要です。口座に残高がないと返金されない被害額に応じて按分される手続きに時間がかかる詐欺グループは迅速に資金を移動させるため、口座に残高がない場合も少なくありません。また、被害者が複数いる場合は、残高を被害額に応じて分配するため、全額が戻ってくるわけではない点にも注意が必要です。公告から支払いまで1年以上かかるケースもあり、必ずしも確実な返金方法とは言えないのが実情です。【まとめ】社内での注意喚起がタスク詐欺から従業員を守るタスク詐欺は、「簡単な作業で高収入」といった甘い言葉で従業員を狙っており、その手口はますます巧妙化しています。人事担当者は、本記事で紹介した詐欺の具体的な手口や被害に遭った際の対処法を社内で共有し、従業員の防衛意識を高めることが重要です。定期的な情報提供や注意喚起を行うことは、従業員を詐欺被害から守り、企業のリスク管理体制を強化するとともに、安心して働ける職場環境の構築に繋がります。