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2025/10/10

【社員を守るために】副業詐欺の返金対応と人事が知っておくべきポイントを解説

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社員の副業解禁が進む一方で、その裏に潜む「副業詐欺」は、企業の人事担当者にとって新たなリスクとなっています。万が一、自社の社員が被害に遭った場合、「支払ったお金は返金されるのか」という切実な問題に、企業はどうやって向き合うべきでしょうか。

この記事では、副業詐欺における返金の可否や具体的な返金方法、そして社員を守るために人事が知っておくべきポイントを事例を交えながら解説します。

副業詐欺に遭った場合、返金は可能なのか?企業が知るべき現実

社員がもし副業詐欺の被害に遭ってしまった場合、人事担当者としても無関係ではいられません。特に「支払ってしまった大切なお金は、果たして戻ってくるのか」という疑問は、社員の生活を守る上で看過できない問題です。

ここでは、返金できるケースと難しいケース、その両方の現実について解説します。

返金できる可能性が高いケース

副業詐欺の被害に遭ったとしても、すぐに諦める必要はありません。以下のような状況では、支払ったお金を取り戻せる可能性があります。

  1. クーリング・オフ制度が利用できる場合

    特定商取引法に基づき、一定の取引(例:業務提供誘引販売取引など)では、契約後一定期間内であれば無条件で契約を解除できます。

  2. クレジットカードで支払いをしている場合

    カード決済を利用した場合、カード会社に申し立てを行うことで、支払いの停止や返金(チャージバック)が認められることがあります。

  3. 詐欺を理由に契約を取り消せる場合

    民法上、詐欺によって締結された契約は取り消すことができます。業者との交渉が難しい場合でも、弁護士が代理人として対応することで、返金に応じるケースもあります。

このように、法的に認められた制度や手段を適切に活用することで、返金の可能性は十分にあります。

返金できる可能性が低いケース

一方で、副業詐欺の被害にあっても、返金を受けるのが難しいケースも存在します。特に社員への注意喚起を行う際には、以下のようなケースを人事担当者としても理解しておくことが重要です。

  1. 相手の身元が不明な場合

    SNSなどのやり取りだけで、相手の氏名や住所などの身元情報が確認できない場合、法的な請求そのものが困難になります。

  2. 被害から長期間が経過している場合

    時間の経過とともに証拠が失われるだけでなく、法的な請求権(損害賠償請求など)に時効が成立してしまうおそれがあります。

  3. 詐欺であることを示す証拠が不十分な場合

    相手とのやり取りの記録や契約内容が残っていない場合、詐欺であることを客観的に証明できず、返金を求める根拠が弱くなってしまいます。

  4. 相手に支払い能力がない場合

    たとえ法的に返金が認められても、相手に財産や収入がなければ、実際にお金を取り戻すことは難しくなります。

このようなケースでは、いわゆる「泣き寝入り」に終わってしまう可能性があります。被害を最小限にとどめるためには、相手の情報を早期に確保し、少しでも不審に感じた時点で速やかに行動を起こすことが極めて重要です。

実際にあった副業詐欺の返金事例

副業詐欺の返金は可能ですが、具体的にどのようなケースで返金に成功しているのでしょうか。ここでは、実際にあった副業詐欺の被害と、そこから返金に至った事例を3つご紹介します。

  • 弁護士による交渉で返金された事例

  • クーリング・オフを利用して返金できた事例

  • カード会社に支払停止を求めて返金できた事例

弁護士による交渉で返金された事例

「月100万円以上は確実」という魅力的なネット広告を信じ、高額な情報商材とコンサルティング料を支払ってしまった事例です。

広告からLINEに誘導され、業者に100万円以上を支払ったものの、送られてきたのは数回のメールマガジンのみで、説明通りの収益は全く得られませんでした。被害に気づいた社員が自ら業者に返金を求めましたが、相手にされず、一度は泣き寝入りを考えたそうです。

しかし、諦めきれずに弁護士へ相談し、代理人として交渉を依頼しました。弁護士が法に基づき返還請求を行ったところ、当初は低額での和解を提示してきた業者も、粘り強い交渉の末、最終的に支払額の8割近くを返金しました。

 クーリング・オフを利用して返金できた事例

SNSをきっかけに、高額な副業マニュアルを購入してしまった派遣社員の事例です。

少しでも収入を増やしたいという思いで契約したものの、届いたのは外部サイトを切り貼りしたような陳腐な内容でした。詐欺だと気づき業者に返金を求めても、「応じられない」の一点張りだったそうです。

しかし、よく確認したところ、まだクーリング・オフ期間内であることが判明しました。そこで、クーリング・オフ制度に基づいて契約解除を通知したところ、支払ったお金を全額取り戻すことができました。

カード会社に支払停止を求めて返金できた事例

「スマホで簡単副業」というSNS広告をきっかけに、高額な費用を支払ってしまった事例です。

実際の内容は、副業とは無関係な有料の出会い系サイトで、報酬を得るには「メール交換が必要」などと理由をつけられ、クレジットカードで合計数十万円を決済してしまいました。

報酬が全く支払われないことから詐欺に気づき、被害者はカード会社へ連絡し、支払停止の依頼書を提出しました。カード会社が支払いを一時的に停止している間に交渉が進み、最終的には詐欺被害を防ぐことに成功しました。

副業詐欺にだまされて買った商品やサービスは、クーリング・オフできる?

社員が副業詐欺に遭い、意図せず商品やサービスを契約してしまった場合、返金への有効な手段となるのが「クーリング・オフ」です。この制度は、一度契約を締結した後でも、法律で定められた一定の期間内であれば、一方的に契約を解除できるものです。

しかし、全ての契約に適用されるわけではなく、利用するにはいくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、クーリング・オフの対象となる取引の種類と、利用できる期間について詳しく解説します。

クーリング・オフの対象となる取引|業務提供誘引販売取引・マルチ商法など

クーリング・オフは消費者を守る強力な制度ですが、どのような契約にも適用されるわけではありません。この制度が利用できるのは、以下のような特定商取引法で定められた特定の取引に限られます。

取引形態概要
訪問販売営業所以外の場所で勧誘され、商品やサービスを契約する取引
電話勧誘販売電話で勧誘を受け、郵便などで契約を申し込む取引
業務提供誘引販売取引「仕事を提供する」などと誘い、業務に必要だとして商品購入や費用負担を求める取引
連鎖販売取引他者を勧誘して組織を拡大すれば利益が得られると誘い、入会金などを支払わせる取引
特定継続的役務提供エステや語学教室など、長期間にわたる特定のサービスを提供する取引

副業詐欺では、特に「業務提供誘引販売取引」や「連鎖販売取引(マルチ商法)」が問題となるケースが多く見られるので、特に注意が必要です。

クーリング・オフの期間

クーリング・オフ制度を利用するには、法律で定められた期間内に手続きを行う必要があります。この期間は取引の種類によって異なるため注意しましょう。

期間対象となる主な取引の例
20日間・業務提供誘引販売取引
8日間・訪問販売

上記の期間は、法律の要件を満たした契約書面を受け取った日から計算が始まります。もし業者から不備のある書面しか受け取っていない場合、期間は進行しません。

そのため、定められた日数を過ぎていてもクーリング・オフが認められる可能性があります。

クーリング・オフ以外の返金方法|状況別の対応パターン

クーリング・オフの期間が過ぎてしまった、あるいは対象外の取引だったとしても、返金を諦めるのはまだ早いです。

支払い方法や契約時の状況によっては、クーリング・オフ以外にも返金を求める手段が残されています。ここでは、状況に応じた具体的な返金方法を3つのパターンに分けて解説します。

  • カード会社に対して連絡をする

  • 金融機関に口座凍結を求め、振り込め詐欺救済法に基づく救済を受ける

  • 詐欺や消費者契約法に基づいて契約を取り消す

カード会社に対して連絡をする

副業詐欺の代金をクレジットカードで支払ってしまった場合、有効な手段の一つがカード会社への連絡です。

特に、口座からまだ代金が引き落とされていない段階であれば、すぐにカード会社へ事情を説明してください。カード会社には、詐欺のような問題がある契約に対して支払いを停止する仕組みがあり、購入代金が口座から引き落とされるのを防ぐことができます。

金融機関に口座凍結を求め、振り込め詐欺救済法に基づく救済を受ける

詐欺業者の指示に従い、指定された銀行口座へ代金を振り込んでしまった場合は、できるだけ早く金融機関に連絡し、口座の凍結を申し出てください。金融機関が詐欺に利用された可能性が高いと判断すれば、該当口座を凍結してもらえる可能性があります。

口座が凍結され、なおかつ詐取された資金が残っている場合には、「振り込め詐欺救済法」に基づいて、口座残高の中から被害金の一部または全部が返還されることがあります。ただし、すでに全額が引き出されていた場合や、残高が被害額に満たない場合には、救済を受けられない、あるいは一部返金にとどまる点に注意が必要です。

詐欺や消費者契約法に基づいて契約を取り消す

たとえクーリング・オフの期間が過ぎてしまっても、返金を求める手段が完全に失われるわけではありません。業者にだまされて契約してしまった場合には、民法第96条第1項に基づき「詐欺」を理由として契約の取り消しを主張できる可能性があります。

また、威圧的な勧誘や誤認を誘う説明など、不当な手口によって契約を結ばされた場合には、消費者契約法に基づく取り消しの対象となることもあります。契約が無効と認められれば、支払った代金の返還を請求することができます。

人事として社員を守るには?社内ルールとサポート体制の重要性

副業詐欺は個人の問題と捉えられがちですが、社員が被害に遭えば、業務への集中力低下やメンタルヘルスの不調にも繋がりかねません。企業として社員を守るためには、以下のような被害を未然に防ぐ「社内ルール」と、万が一の際に支える「サポート体制」の両輪を整備することが重要です。

対策の方向性具体的な取り組み内容
社内ルールの整備・副業に関する明確なガイドラインの策定
サポート体制の構築・人事部やコンプライアンス部門など相談窓口の明確化

重要なのは、ルールで厳しく制限するだけでなく、社員が「おかしいな」と感じた時に、一人で抱え込まずに相談できる環境を整えることです。

企業が積極的に関与する姿勢を示すことが、被害の早期発見と拡大防止の鍵となります。こうした取り組みは、社員のエンゲージメントを高め、企業への信頼感を醸成する上でも大きな意味を持つでしょう。

【まとめ】社員を副業詐欺から守るために人事ができること

社員が副業詐欺の被害に遭ったとしても、クーリング・オフや弁護士への相談など、返金を求める方法は複数存在します。

企業としては、こうした被害を未然に防ぐための社内ルールの整備と、万が一社員が被害に遭った際に一人で抱え込ませない相談体制を構築することが何よりも重要です。社員との信頼関係を深め、より健全な組織運営に繋げてください。

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