失敗パターンを徹底分析!事故が起きずらい副業申請ルールの作り方:大企業のための副業事故対策法【前編】

1.はじめに

近年、働き方改革が進む中で、2018年に副業に関する制限が緩和されました。(【原則と例外の逆転】副業自由の原則と制限可能な副業4個条 厚労省モデル就業規則解説)
この変化に伴い、副業や兼業の制度化が進行しています。しかし、企業側にとっては、特に大企業にとっては、その管理や運用が難題となっています。多くの従業員を抱える大企業では、副業申請のルール作りや管理方法に悩むことが増えています。
本稿では、副業申請ルールの現状、問題点、そして失敗パターンを徹底的に分析します。さらに、事故を未然に防ぐ副業申請ルールの作成方法と、大企業向けの副業事故対策について具体的に解説します。
副業を導入しようと考えている企業、または既に導入しているが運用に困っている経営者や人事関係者の皆様にとって、参考になりますと幸いです。副業申請のルール作りでお悩みの方は、ぜひ本稿を最後までお読みいただき、効果的な副業制度作りに活用してください。
2.副業申請の現状と問題点

近年のビジネス環境において、従業員が副業を持つことは一般的になりつつあります。ですが、企業の副業に対する制度やルールは、往々にして不十分で、これが様々な問題を引き起こしています。
(1)副業申請ルールの不備が引き起こす事故
たとえば、企業側が副業のケースを主に雇用契約やお小遣い稼ぎなどに限定していたり、最新の副業の動向に対する認識が不十分だったりする場合、必要な副業の申請を見逃す、または申請があったとしてもリスク評価が不十分な可能性があります。これらの不備は、副業が主業のパフォーマンスに悪影響を及ぼすリスクや機密情報漏洩の可能性を高めるなど、さまざまな事故を引き起こす可能性があります。
(2)副業制度の要件不足
パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」によると、実際に社員が選択する副業の種類は多岐にわたり、WEBサイト運営から配送、ライター、eコマース、販売、事務、教育、製造など多くの分野が含まれています。特に、デジタル関連の副業は本業の業種にかかわらず幅広く行われており、これに関連した事故も報告されています。副業の多様な要件を十分に考慮した制度がない場合、制度は利用されず、届出も行われなくなる可能性があります。
正社員の副業内容(副業者 n=1703)
パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」
(3)申請されない副業制度の具体例と申請者数
労働政策研究・研修機構の「副業者の就労に関する調査」では、副業を行っているにも関わらず、本業の勤め先に通知している従業員は48.8%にとどまっており、副業を禁止している企業ではさらに低く、72.5%の従業員が副業を本業先に通知していないことが明らかになっています。
副業していることの本業の勤め先への通知(本業の勤め先での副業の禁止状況別、単位:%)
| 本業の勤め先での 副業の禁止状況 | n | 知らせている | 正式な届け出などはしていないが上司や同僚は知っている | 知らせていない |
|---|---|---|---|---|
| 禁止されている | 990 | 12.9 | 14.5 | 72.5 |
| 禁止されていない | 6,609 | 48.8 | 26.6 | 24.5 |
| わからない | 1,385 | 9.0 | 16.6 | 74.4 |
3.副業申請の失敗パターン

副業申請における失敗は多くのケースで見られますが、主なものを以下に挙げます。
(1)申請の提出が後手になるケース
副業制度が未整備な企業や要件定義が不十分な場合、副業を新たに始める前に申請をするのではなく、すでに副業を実施している従業員に対して届け出をもらうことを前提に制度を改定する必要があります。新規の副業を開始する者も、申請が直前になってしまい、問題のある副業を始めてから企業の制限対象に気付き、適切な対応ができない問題や、さらに問題を拡大させる可能性があります。
(2)副業内容の詳細が不明確なケース
副業申請時に企業側が従業員から取得する情報が厚労省モデル就業規則で提示される会社が制限を認められている4箇条に最低限沿った内容を取得できていないと、従業員の副業による本業への影響を正しく評価することができません。顕在化している競合企業での就業だけでなく、潜在競合先や本来本業で行うべき内容に該当する副業による、本業との競業化や反社チェック、副業内容の各種コンプライアンス違反の見過ごしや会社側の誤った承認などにつながります。
(3)管理者側が副業のチェックを十分に行えない・誤って過度にチェックしてしまうケース

管理者側が副業の申請を十分にチェックしていないと、問題が起こった時に迅速に対応することができません。逆に、副業で得た収入額やリスクヘッジ目的外のプライベートな情報など、過度にチェックしてしまうと、従業員の就業時間外の自由が制約され、労使間トラブルや隠れ副業の促進につながる可能性があります。
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副業での収入額: 個人の収入は非常にプライベートな情報
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副業先の同僚や上司の連絡先: 個人的な関係に関する情報
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副業先での評価や本業フィードバック: 個人時間の副業評価はプライベートな情報でありプライベート時間まで評価に入れる事は危険
これらの項目は個人のプライバシーを侵害する可能性があり、個人の重要情報を管理する責任が企業側にも発生するため、企業は従業員のプライバシーを尊重し、必要最低限の情報のみを要求するように努める必要があります。
更に、副業を本業の勤め先に通知していない主な理由として、労働政策研究・研修機構の「副業者の就労に関する調査」では副業していることを本業の勤め先に「知らせていない」とする人(n=3,369)に対して、その理由を尋ねたアンケートデータでは「「個人的なことで言いたくないから」と回答した割合が37.8%と最も高く、プライバシー配慮を求める結果が出ています。
これらの失敗パターンは企業と従業員双方にとってリスクを含んでおり、次章では、これらの失敗を避けるための副業申請ルールの作成方法について後編で解説します。
事故が起きずらい副業申請ルールの作り方【後編】
大企業のための副業事故対策法
執筆者
小林大介 シニアリスクリサーチャー ISO30414リードコンサルタント 株式会社フクスケ代表VOYAGEGROUP(現CARTA HOLDINGS)新卒入社。株式会社サポーターズの立ち上げに関わる。同社で支社長経験後、副業経由でVTuber事業を手掛けるスタートアップにHRマネージャーとして転職。組織急拡大の中、ニューリスクを複数経験。2019年7月に株式会社フクスケを...