副業で過重労働が発生した際の副業事故事例本業と副業のダブルワークによる過労で、社員がうつ病を発症し、労務不能になる事例が実際にありました。本業での業務時間は適切な範囲だったため、労使間の信頼関係を損ねることに。副業も加味した労働時間の管理と社員の健康管理を適切に行うことが、社員を守ることにつながります。本業と副業先を合わせた労働時間「月350時間超」Bさんの本業は、大手出版社の正社員で勤続5年の月刊女性雑誌の編集者です。誌面の企画立案から、各種スタッフアサイン、プロジェクトマネジメントが主な業務です。時々自らがライターとして記事を書くこともあります。雑誌メディアの主戦場が、紙媒体からデジタルに移行していくにあたり、自身のスキルアップのために、社会人向けスクールでWebデザインを学習しました。そこで学んだ内容を生かして、2019年8月より、知人から紹介された小規模のコーヒーメーカーのWebサイト開発と運用の仕事の副業を開始します。契約形態は業務委託契約なので雇用関係はありません。Web開発の仕事はまったくの未経験だったので、適切な稼働時間の見積もりをつけることができずにいました。本業の就労規則では副業は禁止されてはいませんでしたが、申請する仕組みもないので、黙って副業をしていました。2019年11月から12月にかけて、本業で大型プロジェクトが始まりました。同じ時期に、副業先でもキャンペーン強化ため、ボリューム多めのランディングページ開発業務が舞い込みます。本業と副業の繁忙期が重なってしまいました。その期間、本業の業務時間は月約200時間。残業時間は40時間程度なので、忙しくはあるものの、適切な範囲でした。問題なのは、副業での業務時間が月150時間を超えてしまったことです。Bさんはスクールで学習したとはいえ、実務が未経験だったため、業務をこなすためには調べなくてはいけないが多く、通常であれば月40~50時間で終わるはずのものが、3倍以上の稼働時間をかけてしました。2019年12月末に過労で倒れてしまい、うつ病を発症。本業は現在まで休職中。副業先のコーヒーメーカーとは未納品扱いと業務不能で契約打ち切りとなりました。現在は、本業の健康保険による傷病手当金を給付されています。自分の能力を正しく見極めて、本業と副業をバランスをとるこの場合、Bさんは自分の能力を明らかに超えてしまった業務を引き受けてしまったことで、過労によるうつ病を発症してしまいました。Bさんはの仕事スタイルと成長スタイルは、あえて難易度の高い案件を受けることで、それをこなすために自分を追い込んで無理矢理成長することでした。それも確かにの成長の仕方の一つとして有効です。しかし、その結果、本業にも副業も悪影響を及ぼしてしまえば本末転倒です。これは、特に副業初心者の方に多い副業事故のケースですので注意が必要です。結果論ではありますが、本業の繁忙期は事前に予測できたはずなので、それを副業先にも伝えて、業務量のバランスをとってもらうこともできたでしょう。本業の繁忙期に合わせて業務量を調整する旨を事前に交渉しておくことも重要です。コーヒーメーカーもBさんが副業であることをわかって案件を依頼していました。本業の就労規則では禁止されていないので、副業のことも、上長や会社に一言声かけてることで、特に健康面の問題では支援を受けることができたかもしれません。自分の能力の正しく見極め、必要なセクションに適切なコミュニケーションをとることで本業と副業のバランスをとることが、労働者側の意識としては大事です。本業と副業の業務時間を通算、安全配慮厚生労働省が発行する「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では社員の健康管理について以下のように記載されています。副業・兼業者の長時間労働や不規則な労働による健康障害を防止する観点から、働き過ぎにならないよう、例えば、自社での労務と副業・兼業先での労務との兼ね合いの中で、時間外・休日労働の免除や抑制等を行うなど、それぞれの事業場において適切な措置を講じることができるよう、労使で話し合うことが適当である。Bさんの本業先の出版社に落ち度がなかったかといえば、そうとは言い切れません。副業に関する決まりや仕組みを整備できていなかったことも問題です。2018年1月に厚生労働省が「モデル就業規則」にて、 副業を「原則禁止」から「原則容認」になったことを知っていれば、副業による過労問題も容易に予測できたのではないでしょうか。副業による過労問題を事前に防ぐには、本業と副業含めた社員の労働時間を適切に管理することが大切です。取材・執筆: 石塚 健朗 (いしづか たけろう)学生時代よりVC等でスタートアップや大手企業の新規事業創出支援。面白法人カヤックを経てマーケティングブティック「KIUAS」創業。サウナと北欧が心の故郷。Twitter: @Takeroishi